雲隠(くもがくれ)

年度末になりました。日本には新年という大きな区切りがありますが、生活上の変化としては新年より新年度の方がずっと重要です。学生時代は年度が変わるたびに一つ学年が上がります。そして3月には卒業式があり4月は入学式です。社会人も多くの場合4月に入職もしくは移動です。年度初めは新たな気持ちを呼び起こしますが、その前に必ず訪れる年度末は何かと慌ただしいものです。

年度末は退職の時期でもあります。この春退職される方の心情はいかばかりでありましょう。特に長きにわたってある組織に勤務された方であれば、その期間の長さに比例して多くの経験を重ねたことでしょうし、ご苦労もあったことと思います。勤務場所が変わる方々も、仕事の引継ぎに加え新たな職場への準備を怠りなく行う必要があります。お子さんが進級や進学、もしくは新社会人として4月から働き始めるという方もおられましょう。引っ越しなどを伴うとなればさらに大変です。年度末とは実に忙しい時期です。

私自身のことを言えば、個人的には何かが大きく変わるところはありません。ただし原町赤十字病院の院長として年度が変わる今の時期の重要性を十分理解しています。原町赤十字病院の在り方について、近日中に自分なりの意見を述べるつもりです。

ところで年度末になり、私がとても残念に思っていることが一つあります。日曜朝6時からNHKで放送されていた「光源氏でたどる源氏物語」が3月29日をもって終了したことです。この番組では、玉鬘十帖や宇治十帖、匂宮3帖に加え、エピソード的に挿入されているいくつかの帖を省き、源氏のメインストリートの部分だけを取り上げ、実に丁寧にゆっくりと講師の先生が解説してくれました。毎週楽しみにしていました。こういう番組を聴いていると、今さらながら系統的に日本の古典を勉強したくなります。

最終回は幻の巻でした。紫の上亡き後、悲嘆にくれながら静かに暮らす源氏が描かれます。この帖には源氏の死についての記述はありません。そして雲隠の帖が続きます。この帖はタイトルだけで文章はありません。文章がないことについては様々な説があるようですが、私には余白の持つ力、沈黙の強さを感じますし、死というものは本来そういうもの、まさに雲隠なのだと思います。

年度末の何かと忙しい時期ですが、22日には前橋文化ホールで、28日には高崎芸術劇場で、ベートーヴェンの交響曲を聴いてきました。ベートーヴェンの圧倒的な迫力、特に7番と9番の最終楽章の、これでもか、これでもか、という執拗な盛り上がりにいやが上にも精神は高揚し、まさに心が洗われる思いでした。音楽っていいですね。


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