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言うは易く行うは難し

最近たまたまテレビをつけたら、演出家の宮本亜門氏が様々な年代の人を対象に、自分の生きてきた半生を語る番組をやっていました。すでに終盤でしたが、面白かったので最後まで見ました。この中で最も心に残ったのは、講義が終わった後のインタビューです。ある若い女性が、「自分が何かの行動をするとき、その行動に迷いがあったり悩みがあったりする場合、行動する自分を見つめるもう一人の自分を意識して、そのもう一人の自分がいいと思える行動をしたほうがよい、と宮本先生がおっしゃっていた。最近道を歩いていたとき目の前にゴミが落ちていた。そのまま通り過ぎようと思ったけど、もうひとりの自分は拾った方がいい、と考えた。そしてごみを拾い、ごみ箱に捨てた。とてもいい気持がしました」いい話だなあと私自身も感銘を受けしましたが、一方で、「言うは易く行うは難しだなあ」と、もう一人の自分は考えていました。 ところがその数日後、つい先週のことです。この女性が話した通りの光景を、私は偶然目にしました。朝いつものように7時半過ぎに病院に到着し駐車場内を歩き始めると、私よりずいぶん前方を歩いていた一人の職員が急に立ち止まり、何か白いものを拾っていました。遠くだったのではっきり見えませんでしたが、使い古されたマスクのようでした。その職員はそれを拾った後に病院の中に入っていきました。 この光景を見て私はとても幸せな気持ちになりました。善い行動は人を幸せにしますね。

吾妻広域消防本部について

 7月19日の夕方、今年度第1回のメディカルコントロール協議会が吾妻広域消防本部で開催されました。吾妻郡内での消防出動件数やその実態、ドクターヘリの運用件数などの報告の後、輪番制の問題などについて議論がなされました。協議会終了後は5例の症例検討が行われました。当院の救急外来運営委員長である整形外科の齋藤先生が、検証医として適切にコメントをしておりました。この症例検討会には私も参加しておりましたが、大変勉強になりました。 ところで消防と病院は切っても切れない間柄にあります。特に救急医療の現場では、消防の力なくして成り立つことは絶対にありません。お互いの協力体制を適宜見直し、構築していくことは極めて重要です。しかしながら病院のスタッフと消防の方々が出会う機会はほとんど病院の救急外来に限られ、しかも時間も数分程度のこともしばしばあります。この人は見たことはあるなと思いながらも、消防の方々を個々に覚えることは難しいのが実状です。 2019年9月に第27回群馬県救急医療懇談会が吾妻で開催されました。この会では実行委員長を拝命したこともあり、個人的には消防本部の皆さんと定期的にお会いする機会を得ました。またこれまでも協議会や症例検討会に何度か参加しておりました。そのたびに思うことは、消防の方々の強いプライド意識です。自分の仕事が人の命にかかわっているという使命感が、そうさせるのでしょう。知識を習得し、肉体を鍛え、様々な資格を得る努力を怠らない態度は、心より尊敬するところです。 そして個人的には、病院のスタッフと消防の皆さんが定期的に会うことのできる場があればいいなあと思っています。

卯の花会について

 「卯の花会」をご存知でしょうか。耳にしたことがある方もきっといるでしょう。乳がんの患者さんたちの会です。原町赤十字病院では2012年に乳がんの患者会が立ち上がりました。そして2014年に、この会の名称が「卯の花会」と命名されました。芭蕉に随行した曾良が白川の関で詠んだ句、「卯の花をかざしに関の晴れ着かな」が由来です。乳がんの患者さんが、乳がんと診断され治療を受ける中で、自分自身や家族を見つめ直し、新たな世界へ踏み出す時の心持の象徴が、卯の花の可憐な姿に相通ずると思い、会の皆さんと相談してこの名称としました。 私は乳がん患者ではありませんが、設立当初から「卯の花会」の皆さんと関りを持っています。診察室では医療者と患者という関係になってしまいますが、この会では一人の友人として参加させてもらっています。7月15日の土曜の午後、コロナ蔓延後初めての「卯の花会」の集まりが原町赤十字病院内で行われました。新しい会員も5人増え、職員も含め30名以上の人が参加しました。参加者全員生き生きとしていて話も弾み、あっという間の2時間でした。本当に楽しい時間を過ごすことができました。 世の中にはたくさんの集まり、グループがあります。同じ職場、同じ部署、様々な委員会、趣味を同じくする人たちの会、そして家族、兄弟姉妹、同級生、同窓生など枚挙にいとまがありません。その中でもこの「卯の花会」が、会員の皆さんにとってかけがえのないグループの一つになっていけば、医療に携わる私にとってこれほど幸せなことはありません。 「卯の花会」がずっと続くことを心から願っています。

東吾妻町の住民健診のこと

 毎年この時期に東吾妻町の住民健診が行われます。私は副院長就任以来、毎年土曜か日曜に医師としてこの健診に従事しています。今年は町民体育館にテントを張って、非常に蒸し暑い中で診察を行いました。健診を受けることで病気を防ぐことができるわけではありませんが、健診を受けることで自分の健康について考えるきっかけになります。日赤の使命は、人間のいのちと健康と尊厳を守ることです。住民に対して、健康への関心を高めることも私たちの仕事です。 ところで健診に出向くと、以前の日赤の仲間に再会することができます。前事務部長の奥木さんをはじめ、看護師長だった小林さん、清水さん、看護師の橋爪さんや塚田さん、事務の富沢さんなど、多くに方に会えます。(全員書くことができず、申し訳ありません)皆さんとても元気です。そして日赤のことを非常に大事に思ってくれています。退職されても日赤のことを気にかけ、期待もしてくれています。私が住民健診の仕事を従事するのは、彼ら、彼女らに会いたいためと言っても過言ではありません。 そして改めて考えてみますと、自分が健診の仕事をすることで、いつの間にか自分の健康について気にするようになったのかもしれません。

朝の横浜中華街

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6月末に日本乳癌学会が横浜で開催されました。今回は厳選口演に採択されたこともあり、4年ぶりに現地参加させていただきました。と言っても今回の話題は乳癌学会ではありません。横浜中華街です。中華街に行ったことがある人はきっと多いと思います。その目的はたいてい中華街で中華を食べたり飲んだりしながら、友人たちと楽しい時間を過ごすことでしょう。そして訪れる時間は夕方から夜でしょう。ですから早朝の中華街を知っている人は多くはないのではないでしょうか。 私は10年以上前から、どこに宿泊しようが必ず早起きをしてランニングをしています。横浜に宿泊する機会は比較的多いので、早朝の中華街を何度も走ったことがあります。夜の賑わいが嘘のように、朝は非常に静かです。空気も穏やかです。猫がけだるそうに道を横切る姿を目にします。早起きの高齢の方も時折見かけます。祭りの後のわびしさを実感します。 ところで中華街を走った後は、厳しい坂道を登って「港の見える丘公園」に行きます。このあたりの道は複雑で今回も行き止まりにぶつかってしまいました。その後は横浜みなと日赤の正面を走り、山下公園に向かいます。山下公園は早朝でもたくさんの人がいます。私のようにランニングをしている人、散歩している人、ラジオ体操のような運動をしている人、ベンチに座っている人など様々です。夏ですが、「秋の気配」が心に浮かびます。 海を横目に走ることは、実に快適なことです。