特別養護老人ホーム

令和6年4月、特別養護老人ホーム「いわびつ荘」が東吾妻町社会福祉協議会の運営下になったのを機に、原町赤十字病院が嘱託医の契約を結びました。嘱託医は定期的に診療を行う必要があり、私自身が月3回程度訪問診療をしています。

私は医師になり38年目を迎えましたが、特別養護老人ホームのようないわゆる高齢者施設内に足を踏み入れることはほとんどありませんでした。ちょうど20年前にNSTという栄養に関連するチームを院内で立ち上げた際、吾妻郡内の多くの高齢者施設の職員の方々と面識を得て様々な取り組みを共に行いました。知り合いは増えましたが、実際に現場を訪れることはなく、したがって施設を利用している方に直接会うこともありませんでした。

その後様々な人たちとの出会いを重ね、以前わからなかったこと、知らなかったことに気付かされます。7,8年前でしょうか、吾妻の老人クラブのある理事の方はこんなことをおっしゃっていました。「自分は一人暮らし。子供たちは皆県外で生活している。自宅で最期を迎えることが難しいと自覚している。体が弱ってきたら施設に入ろうと思っている」

今年春に亡くなった私の母は、90歳を過ぎても一人で電車に乗ることができましたが、最後の2年くらいは、緊急入院があったり、施設に入ったり、自宅に戻ったり、骨折して手術をしたりと、様々なことがありました。施設入所中には時々面会に行きましたが、そこの職員がとても礼儀正しいので安心したことを記憶しています。高齢者施設がとても身近に感じました。またこの数年の経験で、介護休暇の重要性を強く実感した次第です。

「いわびつ荘」の回診は、地域連携課の金子課長と、フロンティア薬局の薬剤師である石和さんと行っています。金子さんが事前に準備調整しているので、いつもスムーズに回診を行うことができます。薬については馴染みのないものが多いのですが、石和さんが適切なアドバイスをしてくれるので助かります。利用者の中には、私が以前手術した方が数名います。利用者との会話はそれなりに楽しく(意思疎通が困難な方、会話がちぐはぐな方も多いのですが)、結構な刺激を受けます。今では私の好きな仕事の一つです。

以前は自分とは直接関係のないと思っていた高齢者施設は、自分の親が入ることとなり、そしていずれは自分自身が入ることになるかもしれないと思うようになりました。だからというわけではありませんが、高齢者施設はより充実してほしいと思います。施設を「終の棲家」と考える人は今後ますます増えていくでしょう。住民の安心のためにも、原町赤十字病院は高齢者施設との関係を良好に保っていきたいと考えています。


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