ワーク・ライフ・バランスという言葉
自民党総裁選後の高市新総裁の発言は大きな波紋を呼びました。「働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます」高市新総裁の覚悟を示したものでしょうが、この発言には様々な意見があります。違和感を覚える人、明確に反対する人、力が入り過ぎで危ないのではないかという人、えんじゃないかという人。当然だと考える人。皆さんはどう思いますか。
ワーク・ライフ・バランスという言葉は比較的新しいものです。誰もが仕事と生活の調和のとれた働き方ができる社会を実現し、国民一人ひとりが意欲を持って働きながら豊かさを実感して暮らせるように、2007年12月に「ワーク・ライフ・バランス憲章」が策定されました。18年前のことです。
11月9日の朝日新聞に、この言葉について労働政策研究所所長の濱口桂一朗氏のコメントが掲載されていましたので紹介します。
「ワーク・ライフ・バランス」って、実は変な言葉ですよね。この言葉は「ワーク」と「ライフ」が対立を起こしているイメージを与えます。でも家事や育児が「アンペイドワーク(無償労働)」と言われるように、「ライフ」は「ワーク」でもあります。同時に「ワーク」とされるものは「職業生活」という「ライフ」でもある。一般的に「ワーク」は「マスト(やらねばならない)」の世界、ライフは「ウィル(やりたい)」の世界であると考えられています。でも実際は、家事・育児を誰かが「やらねばならない」ように、仕事も面白さややりがいなど「やりたい」ということもあります。
つまり「ワーク」と「ライフ」には明確な境界線はないということですね。そして「ワーク」を「ライフ」の一部として違和感なく感じさせる職場が良い職場と言えるのでしょう。
一方「ワーク」をできる限りやりたい、それこそ自分の人生そのものだし、最も自分らしい姿だ、と考える人も少数ながら存在します。「ワーク・ライフ・バランス」を強調しすぎると、そういった人の可能性をつぶしてしまうかもしれません。極端な例えかもしれませんが、研究者やスポーツ選手、あるいは芸術家と呼ばれる人たちは、他人の知らない見ていないところで凄まじい「ワーク」をしていると思います。やや古い話ですが、ワールドカップで日本ラグビーが初めて南アフリカを破った後、フルバックの松島選手は「我々は誰にも負けないハードワークをしてきた」と発言しました。とても涼しい顔で話していた姿を、今でも思い浮かべることができます。これは、ワーク・ライフ・バランスとは関係のない世界かもしれません。しかし、はっきりそうだと言いきって良いものでしょうか。

コメント
コメントを投稿