青葉若葉の日の光
今は春です。しかしこの春というものは曲者ですね。雪が降るような肌寒い日もあれば、初夏を思わせる日差しが降り注ぐ日もあります。花が清らかに香り、月が朧にかすむ値千金の夜もあれば、春の嵐が吹きすさぶ時もあります。
朝日が東の空に昇る時間が日に日に早くなっています。薄暗い中を走り始めると、天気の良い日は時間とともに赤城山が朱色に変化していく姿を見ることができます。春はあけぼのを実感する時です。霞で山が朧げになることもありますが、それはそれで春らしい。夕暮れ時に空を眺める機会は多くはないのですが、だからこそ日が沈まんとする夕暮れを目にすると、いくつかの歌や詩を想起させます。それらの詩や歌が、その美しさをより際立たせます。現実の美は、私たちの五感とは別に観念の美に支えられているのかもしれません。そして観念の美を作るものが現実の美なのでしょう。
最近は天気の良い日が続いています。ある休日の朝、すでに太陽が十分に東の空に昇っていた時に赤城山を真正面に望むことができました。遠くにあるはずなのですが、まるですぐ目の前にあるように、もちろんそれが錯覚であることは百も承知なのですが、まさに青葉若葉が目の中に飛び込んできました。私が携帯しているトランジスタラジオからはビージーズの「若葉の頃」が流れてきました。偶然なのでしょうが、私のその時の気持ちをラジオはわかっていたようです。初夏です。いろいろなものが生まれ、成長し、鮮やかに変化を遂げる季節です。
ほととぎす鳴くや五月のあやめ草 あやめも知らぬ恋もするかな 詠み人知らず
古今和歌集 恋歌一 冒頭歌です。恋歌の巻に入っていますが、夏の冒頭歌といってもいい歌です。
今は素晴らしい季節です。それはずっと以前からそうだったでしょうし、これからもそうなのでしょう。一日一日を大事にしたいと思います。
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