サロメ

オスカー・ワイルド原作、平野啓一郎訳の戯曲「サロメ」を読みました。「サロメ」については、ビアズリーの挿絵の方が有名でしょうか。多くの方が一度は目にしたことがある絵だと思います。私がビアズリーの挿絵を初めて見たのがいつかは定かではありません。小学校時代、もしかしたら保育園時代かもしれません。その挿絵の作者が誰かは知らなくとも、それが特別な力で私を引き付けたからなのか、記憶の片隅に残っていました。数年前、原田マハ作の小説「サロメ」の表紙(ビアズリーの挿絵)に惹かれ、購入し読んだことがあります。この小説はオスカー・ワイルドに関するフィクションですが、とても興味深く読みました。原田マハの本は絵画に関するものが多いのですが、どれもそれなりに面白く、絵画について大した知識がなくとも十分堪能できます。

さて「サロメ」の話の内容です。サロメは少女の名前であり、この戯曲は少女サロメに纏わる一つの事件を描いたものです。この事件は歴史的には決して重要ではないのでしょうが、芸術家たちはこの事件から多くのインスピレーションを得たのでしょう。繰り返し演劇として上演されますし、映画やオペラの題材にもなっています。昨年たまたま読んだフローベールの「三つの物語」の中の「ヘロディアス」も、読みながら途中で気が付いたのですがこの事件を題材にしていました。(大変難解な文章)特に最後の描かれるサロメの妖艶な踊りについては、いろいろな解釈ができるし表現もできるのでしょう。私自身は演劇もオペラも映画も見たことはありませんが、その踊りを想像することはできます。残念ながら体の細かい動きをイメージすることはできませんが、観念の世界でいくつかの場面をスナップショットのように思い描くことができます。

ところでサロメのような話を私たちが知る意味はどこになるのでしょうか。少なくとも私の仕事に直接よい影響を与えることはなさそうです。効率という点とも全く無縁でしょう。でもそれがいいのだ、と私は思っています。一見無駄と思われることを知ること、さらに知るだけでなく無駄と思われることを実際に行うことも悪くはないと思っています。

サロメの踊りのイメージを、自分なりに大切にすることは意味のあることだと信じています。そういったことが好きなのですから仕方がありません。そしていつかは、本物の演劇を鑑賞したいと心から願っています。

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