三島由紀夫Vs高校生

たまたまラジオをつけたら、三島由紀夫が男子高校生と女子高校生の二人から質問を受けている番組が放送されていました。三島由紀夫は39歳、今から60年前の放送です。しゃべっている内容については、既にいくつかの書物等で読んでいたものでしたので決して目新しいものではありませんでしたが、三島由紀夫と当時の非常に優秀な高校生の対話に、思わず聞き入ってしまいました。心に残ったいくつかの話を紹介します。

体験について。私たちは誰でも毎日何らかのことを体験しています。ほんの些細な体験の中にでも何らかの意味を見出すこと、そしてそれを言葉という媒体で人に伝えること、それが作家の条件である、と述べていました。たぶんその通りだと思います。言葉で伝えるという後者の部分は、おそらく大きな才能と努力を要すると思われますが、前者については作家でなくとも私たちすべてに可能なことかもしれません。難しいことでしょうが、その体験をどう感受しどう生かすかは、私たち次第なのでしょう。

男女の考え方について、生き方について。これについては、私の表現能力では誤解を招く可能性が高くここでは記しませんし、記すことができません。三島由紀夫なりの考えだけでなく、60年前という当時の日本の風潮も多分に影響されることです。

愛について。愛とは社会からはみ出したもの、嫌悪されるもの、認められないものの中に純粋さが存在し、意味があり、たとえば近松門左衛門の心中物語を例に挙げ、それこそが文学のテーマとなると述べていました。文学者としての意見でしょう。その後女子高校生からは女性の恋愛について、また男子高校生からは同性愛について質問がありました。これらについてもここで記すことを控えますが、三島由紀夫は丁寧に答えていました。とても興味深かったです。

全体を通して思うことは、当時の高校生が今では考えられないくらい優秀で、様々なことを悩みながらも、自分の言葉で意見を言えるということに、とても感銘を受けました。たまたまこの番組に出ている二人がそうだっただけなのかもしれませんが。

文学を愛する者はそれほど多くはないかもしれませんが、老いも若きも、そしていつの時代にも存在します。文学を愛する一人の人間として、文学こそが人間の歴史の証であると、なんとなくですがそう考えています。

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