今年の夏はとても暑かったですね。連日猛暑で、屋外で仕事をされる方は本当に大変だったと思います。私は以前もこの院長便りにも書いた通り、毎朝ランニングをしています。休日は長い距離を走るため、熱中症になるのではないかと感じたことがたびたびありました。これは毎年のことで自分でも承知していますので、夏は必ず一定の距離で水道があるコースを走るようにしています。

ところで頭の方では「今年の夏は暑かった」という記憶は鮮明に残っていますが、不思議なもので体の方ではその暑さをすっかり忘れているようです。しかも10月に入ってからの気温の変化には、皆さんも困惑しているのではないでしょうか。もうしばらくすると、冬だなと考えてしまいそうです。

人間の感覚は極端なものには鋭く反応しますので、暑さや寒さ、あるいは台風などの大雨、大雪については、私たちが五感を研ぎ澄ます必要はありません。何しろ天気予報でも連日知らされます。強制的に送り込まれるこれらの情報により、私たちの天候に対する感覚はますます鈍くなっていきそうです。この頃の天気予報は、暑い日があると夏のようだと言い、寒い日に対しては冬のようだと形容することがしばしばあります。

秋は、それを実感しようとしないといつの間にか消え去っていくものかもしれません。秋を味わうことで気持ちに余裕ができ、人の心を豊かにしてくれます。日本の和歌には秋を読んだものが多々あります。

寂しさに宿を立ち出でて眺むれば いづこも同じ秋の夕暮れ

百人一首にも採られている良暹法師の歌です。延暦寺から大原の里に移り住んだ後に詠まれたということですが、私には、遠く離れた人、なかなか会うことのできない人も、きっとこの秋の情緒を自分と同じように感じているに違いない、そんな歌だと勝手に解釈しています。

もう一つ紹介します。古今和歌集の秋歌 上

木の間より もりくる月のかげ見れば 心づくしの秋は来にけり 詠み人知らず

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