遥かなる山の呼び声
大学生時代、帰省した時に実家でこの映画をテレビで見ることがありました。たまたまテレビのスイッチを入れたらこの映画が放映されていたのでした。偶然目に入ったというわけです。しかし私の心はたちまちこの映画に引き込まれ、時が経つのを忘れるほどに没入していました。40年くらい前の話です。その後この映画はたびたびテレビで放映されています。必ずというわけではありませんが、時間があれば途中からでも見るようにしています。先月この映画がテレビで放映されることを知りました。今回は録画をすることとし、先週末ようやく鑑賞することができました。
「遥かなる山の呼び声」について簡単に説明しましょう。1980年3月に公開された、山田洋次監督の作品です。舞台は北海道の酪農地帯。嵐の夜、ある男が酪農を営む家に突然訪れ、雨風をしのぐためにどこでもいいから泊めてほしいと懇願するところからこの映画は始まります。その酪農を営む家には、夫を亡くした女性と一人息子が住んでいます。その後その男は、その家で酪農の仕事を手伝うようになります。最初こそぎくしゃくしていた3人の関係ですが、徐々に変化し、ある時期からは静かな幸福といっていい時間が訪れました。そしてその女性はその男にいつしか心を寄せるようになっていきました。しかしその男には隠していた暗い過去がありました。その過去と現在のささやかな幸福には相容れないものがあり、その男は自分の過去を女性に打ち明け、その家を去る決意をします。その晩は最初の出会いの日と同様の嵐でした。しかも牛が急病となり二人は獣医とともに牛の看病をします。この嵐の中の二人の姿は圧巻です。そして最後のシーンは網走刑務所に向かう列車内です。この場面は実にいい。この映画の中で重要な役を演じるある男が、「よかった、本当によかった」と涙を流しながら訴えます。結末はわかっているのですが、この最後のシーンを見たいがために、私はこの映画を繰り返し鑑賞していると言っていいでしょう。
ちなみに男役は高倉健、女性は倍賞千恵子、息子は吉岡秀隆、最後の重要な役を演じた役者はハナ肇です。みな名優です。
私は映画を見るのは決して嫌いではないのですが(むしろ好きと言っていいと思いますが)、実際に見た映画は本当に限られています。ですから映画について、どうのこうのと言える見識はありません。しかしたまたま見た映画がよかったという経験は大事にしたいと思っています。
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