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7月, 2025の投稿を表示しています

猛暑

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天気予報をよれば北海道から沖縄まで至る所で猛暑ですが、その中でも群馬県は全国で最も暑い県の一つであることは間違いありません。県庁所在地の最高気温の高さでは、前橋市は常に上位です。以前から館林の暑さは有名でしたが、数年前から伊勢崎や高崎の名前をよく耳にするようになり、最近では太田や桐生の名前もたびたび登場します。35度ではもはや驚くに値しません。そのうち40度超えも当たり前になってしまうのでしょうか。 「適切にエアコンを使い、不要不急の外出を控え、のどが渇く前に水分や塩分をこまめに補給しましょう」こういった言葉を、私たちは一日に何度となく耳にします。ニュース番組の最後は、だいたいこのセリフです。当たり障りのない言葉ですし、実際この暑さですから当然といえば当然です。しかし私にはどうも違和感があります。 まず適切にエアコンを使え、という言葉です。私の外来に来る患者さんの中には、家にはエアコンなんてものはないよ、とおっしゃる方が時々います。さぞかし暑いと思いますが、それなりに工夫して涼をとっているようです。エアコンの普及率がどれだけのものか知りませんが、全世帯にあるはずがありません。そもそもエアコンを使うから余計に熱が発生し、世の中の暑さを悪化させているのですから、全くおかしな話です。 不要不急の外出を控えてください、という言葉も同じような印象を持っています。コロナ以降しばしば耳にしますね。それまでは、外出するときに急ぎであるかどうかについては考えることはあったとしても、その外出が必要かどうかということについてはいちいち考えることはなく外出していたはずです。改めて不要不急の外出を控えて、という言葉を聞くと奇妙な感覚を覚えます。 のどが渇く前に水分や塩分を補給してください、という言葉も不思議です。「のどが渇く前」というのは、のどが渇いて初めて「のどが渇く前」を知ることができるわけですから、のどが渇く前に水分や塩分を補給してください、という言葉は、どうもおかしいのではないかと感じてしまいます。 屁理屈ばかりになってしましましたが、それだけ今の世の中が暑いということなのでしょう。地球温暖化は、私たち地球に暮らす人間にとってだけでなく、あらゆる生物にとって極めて重要な問題です。個人でできることは些細かもしれませんが、常に念頭に入れることは大事です。原町赤十字病院も一つの組織として地...

なりたい自分

先日ある学会に参加しました。いくつかの新しい知見を得るとともに、いくつかの刺激を受けてきました。その中の一つを紹介したいと思います。 それは食事と健康に関する講演でした。演者は農林水産省の方です。食事は栄養摂取の最も重要な手段であることは言うまでもありません。そして食事、栄養に気を付ければ健康は維持できますよという話は、誰もがきっと何百回となく耳にしていることです。たとえば「甘いものは控えましょう」、「カロリーの取り過ぎはいけません」、「アルコールの飲み過ぎには注意」、「脂っぽい食事は控えめに」、「野菜をたくさん摂取しましょう」などなどです。こういった話を聞いた時の私たちの反応もだいたい決まっています。「そんなことはよくわかっています」、「ああそうですか、それができないから困っているのですよ」、「アルコールの飲み過ぎも、たまには体にいいとでも言ってくれないものか」、「だいたい世の中にはうまいものが多すぎるからよくないのだ」などではないでしょうか。 今回の講演の最も重要なポイントは、こんな食事の仕方がいいとか、こんな栄養素がいいから摂取しろというものではなく、最初に「なりたい自分」というものを自分自身がイメージしろということでした。「なりたい自分」というものを思い描きながら食事を再考しなさい、摂るべき栄養素を自分自身で考えなさいということです。 とは言われても、「なりたい自分」なんてものは考えてことはない、それより今の自分を大事にして好きなことをしたい、食べたいものを食べたい、と考える人の方が多数かもしれません。しかし他人に公言することはなくとも、心の中でひそかに「自分はこうありたい」と思っている人も実は多いのでないかと思います。「なりたい自分」になるために何か新しいことを始めることは大変でしょうが、毎日摂取している食事の内容や食事方法を少しばかり変更することは、それほど難しくはないのかもしれません。 どれだけ年をとっても、なりたい自分というものを時々考えることは意味のあることだと思います。人は生きている限り食事との関係が続きます。豪華な食事を連日摂取することが良いわけではありません。そういった食事はたまに食べることができるからこそ意味があるものです。 私は一昨年の秋より、昼に病院の検食をいただいています。病院の食事を食べることで、それだけで健康を維持できているような...

無題

  廬を結んで人境に在り   而も車馬の喧しき無し   君に問 ふ 何ぞ能く爾るやと   心遠ければ地自づから偏なり   菊を採る東籬の下   悠然として南山を見る   山氣 日夕に佳く   飛鳥 相與に還る   此の中に眞意有り   辨ぜんと欲して已に言を忘る   陶淵明    

田植え

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群馬では5月下旬から遅くとも6月上旬に田植えが行われます。水が張られた田んぼの中で苗が徐々に育っていく様子を見ると、毎年のことながらいい光景だなあと思います。 私の外来を受診する方には、農作業に従事している人がたくさんいます。時間に余裕がある時は、どんなものを作っていますかと、よく質問します。実に多くの野菜を作っている人もいますし、少ない種類の野菜を集中して栽培している人もいます。出荷している方もいれば、自宅用に作っているという方もいます。 こんにゃくは吾妻で栽培される中でも重要な野菜の一つかと思いますが、ここ数年値崩れの傾向にあること、後継者がいないこと、また栽培するのが実に大変なこと(話を聞いて驚きです)などより、こんにゃく作りを止める農家が増えていると聞きました。また一部の野菜は、十分育ちそろそろ収穫しようという時期に、猿やシカその他の動物に食べられてしまう、食べられてしまったのでとても悲しい、という話を聞くこともしばしばあります。 どんな仕事も楽ではないというのは当然のこととはいえ、やはり農作業というものは過酷な仕事だとつくづく思います。特に最近の猛暑は相当な影響を与えているかと推察します。この仕事を従事する人たちが安心して継続できる社会であってほしいと願いますが、実際に仕事をしている方々の意見を伺うと、それは非常に難しい問題であると実感します。 ところでいつも思うのですが、農作業に従事している人には一つの特徴があります。それは多くの人が実に元気だということです。80歳代は言うに及ばず、90歳を過ぎてもそれなりに仕事をしている人が少なからずいます。人間は頭を使うことは大事ですが、体を使うことはもっと大切だということなのでしょう。 先日の外来に80歳を超えた男性が受診しました。大きな手術を何度もしている方です。今年4月中旬にも手術をしています。元気そうで何よりだったのですが、話しを聞いてびっくりしました。「傷が痛かったんで、今年の田植えは6月の始めにしたよ」ということです。恐るべし! 農業のことは無知ですので偉そうなことを言える資格は全くないのですが、日本の米は、こういった人々によって守られているのだろうなあ、と感じています。